この時期になると、ある猫さんたちとのことを思い出します。

秋の夜長にひとつ、不思議なお話でもいかがでしょうか。

 

 

 

当時まだ学生で、カフェでバイトをしていました。

バイト先の近くには猫屋敷が多く、人慣れした猫さんたちが沢山いました。

猫好きには堪らない環境でした。

 

その中に1匹。

真っ白い男の子がボスとして君臨していました。

数件ある猫屋敷の1軒の家のおばあさんにしか懐いておらず、サバイバーなボスでした。

 

ある夏の暑い日に白猫くんは口にセミを咥えてジージー言われながら誇らしげに近寄ってきました。

またある日には大きなカマキリを捕まえ、誇らしげにしていました。

 

 

そんな白猫くんと少しづつ距離を縮め時々、頭を撫ぜさせてもらう仲になりました。

いつも凛として真っ白い毛並みが綺麗だったので岩下志麻さんから名前を取って「シマさん」と呼ばしていただきました。

なので、私の頭の中で交わされるシマさんとの会話は・・・

「自分、今帰りか?」とか「自分、最近げんきないのぉ。」とか、楽しいものでした。

 

バイトがいつもより遅く終わった日。

シマさんは裏口で待っててくれました。

夏が終わり、虫たちがにぎやかになった今頃の秋でした。

 

いつものようにシマさんは「自分、今日は遅かったなぁ」と声をかけて来てくれました。

「えぇ、今日は新人さんが入ってきて大変でしたから・・・」というと、

「わてについて来な」と言ってスタスタ涼しい風を切って歩き始めました。

「シマさん、どちらまで行かれるんですか?」と聞くと「えぇでついて来なはれ」

バイト先から少し離れた小さな広場に近づくと何匹もの猫たちが半円状に集まっていました。

広場に着くと猫たちはザワザワ。

シマさんは気にすることなく、広場内のベンチに私を座らせ、半円状の真ん中に歩いて行きました。

 

空を見上げると綺麗な満月。

猫たちは月を見るために集まっていました。

そうなのです。猫たちの集会に招待されたのです。

真ん中で何やら にゃごにゃご いうシマさん。

静かに耳を傾けながら月を見上げる猫たち。

・・・その後ろでベンチに座る私。

 

シマさんの演説が終わると猫たちはちらほら寄ってきてゴロゴロ喉を鳴らしながら一緒に月を見上げました。

 

風が冷たくなり、月が雲にかかり始めると猫たちはぞろぞろと家路につき、

シマさんも「自分もはよ帰ってねぇよ」と言い残し帰って行きました。

 

それから数回分の満月の夜は猫たちと一緒に集会に参加しました。

毎回シマさん直々のお迎え付きでした。

 

虫の声と少し肌寒い風を受けるとあの満月を思い出します。

大切な大切な思い出。

 

ちょっとファンタジックな本当のおはなし。

 

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