暑さと湿気と満員電車にぐったりとした薄暗い帰り道。
トボトボと歩く道の先にスーツの上着を片手に歩く人の影。
ジメジメと張り付いてくるシャツに嫌気が差し始め、ひたすら下を向いて歩いていました。
十字路に差し掛かり顔を上げると
前を歩く方がイヤホンを耳に付けた瞬間でした。
少しすると心なしか前を歩く人の足取りが軽くなったように見え、
次の十字路で「うっしゃー」と拳を突き上げていました。
彼に何かいい事が起きたのかもしれません。
もしくは、好きな曲が盛り上がりを迎えたのかもしれません。
何があったかは分かりませんが、
クスリと笑え、それまで疲れていた気持ちがどこかへ飛んでいきました。
その日の夜空はいつになく星が綺麗に見えました。