あの夏、私は初めて甲子園に興味を持った。
教室でふざけていた同級生が期待の2年としてマウンドに立っていて
通路を隔てたブロックにはブラスバンド部の友人が懸命にトランペットを吹いていた。
県内予選は大会時期ではない運動部が持ち回りで応援に参加する決まりがあって
朝から制服を着て登校して学校のバスで会場へ連れていかれた。
レギュラー落ちした野球部の先輩が観覧席の最前列で応援のレクチャーをする。
先輩はどんな気持ちで仲間のテーマソングや掛け声を話してるんだろうか…と複雑に感じたが
盛り上げ上手な先輩のお陰で応援が凄く楽しかった。
「今年はもしかしたら行けるかもしれない」
私の知る限り入学する前から全国的に知られる強豪校に毎年あと少しの所で砕かれている。
それが何故だか今回は可能性があると囁かれていた。
球場内にカキーーーンと響く乾いた金属音。
放課後の校舎で聞くよりも期待が増す。
隣のブラバンの音がオレンジ色に染まる廊下の先から聞こえた演奏より張りがある。
汗だくになって応援していた他の部活の友人が
「これで甲子園行ったら私らも応援で連れてって貰えるかな?青春じゃん!人生の記念になるよ」と
点数板を指さしながらはしゃいでいた。
今でも鮮明に思い出せるほど暑くてワクワクして声を張って応援した。
先日、ラジオをつけると知ってる曲順でブラスバンドが演奏していた。
20年近く経った今もどこも定番は変わらないのね、と思っていたら母校が戦っていた。
何度も繰り返し聞いた曲順と合いの手が気持ちをあの時に連れていっていた。
応援に行ったあの夏から毎年のように結果を見るようになった。
エナメルの部活鞄を砂だらけにして朝練から教室にくる。
雨の日に廊下で筋トレをする。放課にグローブを被って遊ぶ。
野球部関係の先生の授業で沢山当てられて仲間同士で教え合って。
きっと今日もあのグラウンドで練習をしていると思う。
友人や私のように心を弾ませて応援ができるのは
日頃見える部分も見えない部分も努力をしているのを知っているから。
だから純粋に勝って一緒に喜びたいと思う。
今年もお疲れ様でした。
また来年頑張れ!ずっとずっとあの夏の続きが見たくて応援しています。
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