優しさにはいくつかの形がある
優しさにはいくつかの形があります。
伝える優しさと、我慢する優しさ。
どちらも根っこにあるのは同じ“思いやり”ですが、
行動に移すか、胸の中にしまっておくか…その違いがあります。
最近、こんなことがありました。

アクシデントは突然に…
最初の異変
自転車で走っていたとき、聞き慣れない音がしました。
「なんだろう?」と思いながらも、特に気にせず目的地を目指していると、
しばらくしてペダルが急に重くなり、タイヤを見ると見事にパンクしていました。
どうやら何かを踏んでしまったようです。
修理と一安心
幸い、目的地の近くに自転車屋さんがあったので、駆け込みました。
用事を済ませている間に修理をしてもらい、帰り道は快適そのもの。
ひと安心して家に帰りました。
翌日の迷い
ところが翌日。
また自転車に乗ろうとすると、前日と同じタイヤがパンクしていたのです。
昨日の帰りも問題なかったのに…
「昨日のお店にもう一度相談したほうがいいのかな」
「それとも、別の店で見てもらったほうがいいのか」
そんなふうに迷いました。
伝えるべきか、黙っておくべきか。
たったそれだけのことなのに、心の中で少しざわつきました。
伝えることで
このまま黙って、別のお店に行けば済む話かもしれません。
けれど、修理をしてくれたお店の人は、何も知らないままになります。
もし立場が逆だったら…自分があのお店の人なら、教えてもらえた方が嬉しいと思うのです。
それに、この先も何度もお店の前を通るたびに、きっとどこかでモヤモヤしてしまう気がしました。
とりあえず、相談するつもりで昨日のお店に行ってみることにしました。
店員さんとのやりとり
再開と相談
お店に着くと、昨日対応してくれた店員さんがすぐに気づいて声をかけてくれました。
昨日のお礼を伝えたあと、
「今日、乗ろうとしたらまたパンクしていて…」と話すと、
店員さんは慌てて修理を担当した方を呼びに行き、2人で丁寧に話を聞いてくれました。
原因の特定
「原因を調べてもよろしいですか?」と声をかけると、
店員さんはすぐに作業に取りかかりました。
手慣れた様子でタイヤを外し、チューブに空気を入れて水を浸していくと、
小さな気泡がぽつり、ぽつりと浮かんできました。
原因は、修理の際に張った特殊なテープがほんの少しずれていたことでした。
再修理の提案と感謝
原因が分かって、胸の奥がふっと軽くなりました。
店員さんは手際よく、しかも誠実に対応してくれて、話を丁寧に効いてくださる姿勢がとても印象的でした。
「泡が出ている所に、もう一度テープを貼れば直りますか?」と尋ねると
店員さんは首を振りながら言いました。
「張り直しや重ね貼りはできないので、チューブごと交換になります。
費用は当店で負担しますので、お時間だけいただけますか?」
「それは申し訳ないので、お支払いします」と伝えると
「ご不便おかけしましたし、修理代は昨日いただいてます。もちろん今回は当店の負担です。」と深く頭を下げられました。
その言葉に、申し訳なさとありがたさが入り混じったような気持ちになりました。
修理完了
10分もしないうちに修理が終わり、一緒に点検をしてから、出口まで自転車を押して行きました。
すると修理を担当して下さった方が
「教えてくださって、ありがとうございました。また、いつでも来てください」とお見送りをして下さいました。
「もちろん、これからもお世話になります」と伝えて
丁寧にお礼をしながらお店を後にしました。
最初から最後まで誠実で、真心のこもった対応に心が温かくなりました。
伝えることで得られたこと
伝えるか、伝えないか迷ったけれど、今回は伝えて良かったと思います。
あのまま黙っていたら、きっとずっと心のどこかでモヤモヤしたままだったでしょう。
そして、あのお店を“行きつけ”にしたいと思う気持ちも、生れなかったと思います。
伝えることで生まれる優しさもあります。
その言葉が誰かの力になったり、関係をつないだりすることもあります。
今回の出来事を通して、伝える優しさと、その伝え方を学びました。
最後までお読みいただきありがとうございます。
小さな一歩が、大きな安心につながります。
投稿者プロフィール
- くれたけ心理相談室 名古屋南支部 心理カウンセラー
-
名古屋市南部を中心に、ルーム・カフェ・訪問・オンラインでカウンセリングをしています。
言葉にする前の心の声にもそっと寄り添い、少しでもほっとできる時間を届けたいと思っています。
趣味は読書、写真、カフェ巡り。
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