記憶の中の彼女は
華奢な手首と控えめにコロンを漂わせ
「大きくなったわね」と目元にシワを寄せた。
数年前に会った時も
「大きくなったわね」と昔と変わらない控えめな香りとより華奢になった腕が伸びてきた。
数ヵ月前に会った時には
私のことを忘れていたけれど、
数十年前に亡くなられたおじいさんの命日だけは覚えていた。
今朝までの出来事のようにおじいさんとの話をして、いとおしそうに花を活けていた。
どれだけ多くのことを忘れても
おじいさんとの記憶をどこにも置いてこなかったのは愛の力だと思った。
それから数ヵ月後彼女は愛する人のもとへ旅立ったと聞いた。
ジャスミンの香りが横を掠めていった。
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